米債務上限問題とは、米連邦債務、すなわち、米国(アメリカ)の連邦政府が国債を発行して調達する債務(借金)の金額が定められた上限金額に近づいたり到達したりすることで、米国の財政赤字拡大や、財政問題そのものが懸念される問題のことを言います。
 米国では1917年に成立した関連法によって、米連邦債務(=国債発行金額)の上限が定められており、その上限を超えると、国債を新たに発行して資金を調達することができなくなります。そのため、米連邦債務が法定上限に達しそうになったり、達してしまった場合は、原則として議会で法案を成立させて、国債発行金額の上限を引き上げる必要が生じます。
 しかしながら、2008年のリーマンショック後に行った財政・金融の大規模な緩和政策などで、米連邦債務が大幅に膨れ上がった米国では、財政の健全化を求める議会の声も強く、米連邦債務の上限引き上げをめぐる与野党の対立が長引き、その間に連邦債務が法定上限に達して財源が枯渇した結果、政府機関の一部が一時的に閉鎖される事態も経験してきました。
 仮にそのような状態が続けば、社会保障や国防などといった、国家の維持に重要な支出ができなくなる可能性が生じるばかりでなく、最終的には利払いや償還が行えない債務不履行(デフォルト)に陥ることにもなります。こういったことからこの問題は「米債務上限引き上げ問題」と呼ばれることもあります。
■米債務上限問題が注目されるようになったきっかけ 米債務上限問題が金融市場で注目されるようになったのは、2011年にオバマ政権が債務上限の引き上げに関する法案を成立させた数日後に、大手格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が、財政状況の悪化懸念を理由として、米国の長期発行体格付けを最上級のトリプルA「AAA」からダブルAプラス「AA+」に1段階引き下げたことにあります。
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 米国債は世界の安全資産の代表格ともいえる存在です。その米国債が最上級の格付けから滑り落ちてしまったことにより、金融市場が一時混乱したため、この一連の出来事は「米国債ショック」などと呼ばれることもあります。
 それ以降、米連邦債務が上限に近づくと、市場で米債務上限問題が話題となり、意識されるようになりました。
 しかしながら、米連邦債務の上限については、議会で法案を成立させて引き上げる方法以外にも、一時的な上限の適用停止、一定期間は通常の国債発行を認める暫定延長、財務省による特例措置など、さまざまな回避手段が存在します。
 そのため、債務上限への到達が即、米国のデフォルトを意味するわけではありません。また、米連邦債務が膨らむことによって、米国の財政状況そのものが懸念されたり警戒されたりする可能性は否めないものの、議会が最終的に米国のデフォルトを選択する可能性は非常に低いことから、米債務上限問題自体がマーケットに与える影響は、一時的なものであると考えられます。