(「【西原宏一が教える FXトレード戦略超入門】「金」などのコモディティ市場にも目を配ろう」から続く)
 FXで勝つためにどうしたらいいか?
 どうなるかわからないマーケットで利益をあげることに躍起になる前に、失点を減らすことを考えたほうが現実的だと思いませんか?
FX戦略で基本となるのがリスク管理。4章では、僕が何より重要視するストップ(逆指値注文)の置き方や資金管理について、お話していきます。
そのトレード、参加する価値がある?
 あなたがじゃんけんに勝てば、1000円を差し上げます。ただし、じゃんけんをするには、800円を支払ってください。
 そんなオファーがあったら、あなたはチャレンジするでしょうか?

 単純に考えてあなたが勝つ確率は50%。1000円がもらえる確率が50%ということは、じゃんけん勝負の「期待値」は500円となります。
 期待値500円の勝負に参加するために800円を支払うということは、あまり割のいい勝負ではありません。つまり、このじゃんけん勝負は、「参加しない」のが得策です。
 冷静に考えれば納得できることでしょうが、瞬時に判断できる人は意外と少ないのかもしれません。
 FXのトレードでは、こうした判断が求められます。
 「ここでエントリーすると、リスクはどれくらい?」
 「それに対して、ターゲットまでの幅は?」
 損切りまでの幅が3円もあるのに、ターゲットまでは1円幅しかないようならば、あなたはポジションを持つでしょうか。

 3円のリスクに対して、1円のリターンというのはあまりに非効率。リスクを背負う価値はありません。
 トレードをする前に、参加する価値がある「割のいい勝負」かどうかを、見極める必要があります。
 1章で「ストップ注文を入れないトレードはありえない」とお話ししました。繰り返しになりますが、リスクを管理し、トレードの効率を考えるためにも、どこにストップを置くのか、どの程度のリスクなのかを検討することはとても大切なのです。
どのくらいやられるか?から考える
 そのストップをどう決めるかですが、ストップまでの幅は、残念ながら一律にいうことはできません。
 基本的には「どのくらいやられるのか」を考えるわけですが、通貨ペアやボラティリティによっても変わりますし、人それぞれのトレードスタイルによってもさまざまです。
 ストップの幅は「時と場合による」ということを前提にひとつの目安としていうと、米ドル/円であれば100pips以内でしょうか。
 タイトにしておきたいけれど、すぐについてしまわない程度の幅です。
 もちろん、ボラティリティの大きな通貨ペアであれば、150pips、200pipsと離してストップを置くこともありますし、手堅いバリアや壁の存在がわかっている場合はタイトに設定することもあります。
 そのときの値動きの傾向やテクニカル分析などを参考に、具体的に決めていきます。その具体的な方法は、次項で解説します。
資金管理ができない相場は戦略が立てられない
 ストップを入れれば万全かといえば、そうではありません。FXには、ストップを置いてもいくらで約定するかわからないこともあります。
 例えば、2016年6月24日、イギリスで行われたEU離脱の是非を問う国民投票で、離脱派の優勢が伝わると英ポンドは暴落しました。
 対円では瞬間的に10円近く下落し、その間にストップの逆指値注文を置いていても、約定したレートは指定したレートとは大きく乖離していたはずです。
 値動きのスピードが速いときには避けられないことで、FXでは起こりうるリスクのひとつです。
 当時のメルマガにはこう書いていました。
 「ストップがどこで約定するかわからないマーケットではトレードになりません」
 「国民投票をまたいでの英ポンド/円のリスクを取るのはかなり無謀」
 ストップがいくらで約定するかわからない、つまり、資金管理ができないマーケットでは戦略を立てられません。
 このようなリスクのあるイベント前はトレードを手控えるのがよいでしょう。
 また、取引が少ないマイナーな通貨にも同じリスクがあります。典型的だったのが、2016年1月に起きた南アフリカランドの急落です。
 南アフリカは政策金利が非常に高いため、その通貨ランドはとくに日本人に人気です。
 しかし、南アフリカランドはマイナー通貨、ちょっと大きな注文が入るだけで為替レートが激変します。
 2016年1月の早朝、南アフリカランド/円が10%以上の暴落となったのも、スワップ金利を目当てに買っていた日本人のストップが約定し下げて、一段下のストップを誘発……というスパイラルによるものだったのでしょう。
 こうした動きをされると、資金管理はとても難しいものです。僕は大きなイベント前はメジャー通貨と同様、マイナー通貨もトレード対象から外しています。
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多くのトレーダーが注目61・8%や38・2%
 ストップ位置の目安を考えるテクニカル分析としてわかりやすいのが、「フィボナッチ・リトレースメント」です。
 13世紀のイタリアで活躍した数学者・レオナルド・フィボナッチの研究をもとに生まれたのがフィボナッチ数列で、黄金比率「1:1・618」とも密接に関係しています。
 この黄金比率を相場に利用したのが、フィボナッチ・リトレースメントです。リトレースメントとは「引き返す」という意味があり、押し目や戻りの目安を示してくれます。
 使い方は簡単で、上昇トレンド中の押し目を探すのであれば、トレンドの始点となった安値からトレンド中の高値へと引くだけです。
 すると安値・高値の幅の61・8%や38・2%(1から61・8%を引いた比率)が表示されます。
 高値から38・2%下げたところが、最初のストップ位置の候補です。ただ、それではあまりに近すぎるときは50%、あるいは61・8%を基準にしてストップを置きます。
 このとき、38・2%ちょうど、50%ちょうどではなく、そこから5~10pips程度、離しておくとよいでしょう。
 このフィボナッチ比率は多くのトレーダーが参考にしています。
 例えば、上昇トレンドに乗れなかった人は「フィボナッチの節目まで下がったら買おう」と待ち構えているでしょう。
 そのためフィボナッチ比率のところが押し目買いのポイントとなり、反転しやすい傾向があります。
 逆に言えば、フィボナッチ比率のポイントでも下げ止まらなければ、トレンド反転の可能性あり、ということにもなります。
 こうしたことを考えると、フィボナッチ比率を超えて下がるようなら損切りする、というのは合理的な判断だといえるのではないでしょうか。
ストップは基準線と転換線、雲に着目
 とても便利なフィボナッチ・リトレースメントですが、高値・安値が明確なときにしか引けません。トレンドの初期だったり、相場が急変したときなどには使えないこともあります。そんなときは、「一目均衡表」を表示させてみましょう。
 日本生まれのテクニカル分析である一目均衡表ですが、今ではグローバルに使われています。
 一目均衡表をチャートに表示させると、雲、基準線、転換線、遅行線の4つが表示されます。遅行線は現在値をローソク足26本分後ろにずらして表示させただけの線です。
 これは損切りの基準にはなりにくいため、基準線、転換線、そして雲の3つに着目していきます。ローソク足がいずれかに沿って推移していることがよくあります。
日々変化のある一目均衡表は動的基準
 「一目均衡表で考えるストップ位置」の図ではローソク足が雲を下抜け、雲の下で推移しています。これが下落トレンドのサイン。何度か反転上昇しても雲が壁となり、下げる動きが度々見られます。
 こんなときは、「雲を上抜けたら損切り」と考えて、雲の上限より少し上に離したところへストップを置きます。
 一目均衡表には、フィボナッチにはない特徴があります。フィボナッチが示すポイントは高値か安値を更新しないと変わりません。いわばストップの「静的」な基準です。
 しかし、一目均衡表は日々、位置を変えていく「動的」な基準です。そのため、ストップの位置を頻繁に変更することができます。
 図の場合も最後には雲を上に突き抜けていきますが、雲の位置が下がるにつれてストップを移動させていけば、最後にストップが約定しても十分な利益を確保できます。
最適なストップを考えるクセをつける
 ストップをどこに置こうかと検討するとき、トレンドが出ている相場だったら、まずはフィボナッチ・リトレースメントを引いてみましょう。
 その38・2%、あるいは61・8%がストップの位置として使いにくいようなら、あるいは相場が一目均衡表に沿って推移しているようなら、一目均衡表を目安にしてストップを置いていく。
 雲を例に紹介しましたが、「基準線を割ることなく上がっていく上昇トレンド」であれば、基準線の少し下にストップを設定することもできるでしょう。
 もちろん、ストップの基準となるのは、この2種類だけではありません。
 前日の高値や安値が使える場合もあります。移動平均線がサポートとして効いている相場だったら、それを参考にしてもいい。まずはチャートをじっくり見ることが大事です。
 相場にあわせて、最適なストップはどこか、考える習慣を身につけてください。
(ザイ投資戦略メルマガ事業部)
(つづく)
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